(以前のブログからのお引越し記事です)
「6月の風」に続いてこちらも。ざーっくりとですが、まとめます!
◆作曲の経緯
ブレーン株式会社より依頼を頂き、作曲しました。
「アンサンブルコンテストで使える曲を」との依頼でしたが、初めから具体的な内容についての指定があったわけではなく、現場をよく知る社員の方と相談しながら、方向性を決めました。
その中で決まったテーマと、具体的に曲に反映された内容を列記します。
◎初心者でも取り組みやすい曲→ロール・複雑な装飾・3連符・特殊な奏法を使用しない
◎基礎練習になる曲→3人でのユニゾン(クセ、訛りの矯正)、2つ打ちの2打目にアクセントを付ける練習(ロールの導入)、アクセント移動(DUFTストロークの使い分け)、短いリズムのかけ合い(周り”に”合わせるのではなく、周り”と”合わせる体験)等
◎小編成の学校、団体でも取り組みやすい曲→3重奏、特殊な楽器を使用しない、乗用車に積める楽器のみを使用(コンガ・ボンゴ・バラしたドラムセット)
◎視覚的にも楽しめる曲→楽器をひとかたまりにセットし、共有する
◎単純にかっこいい曲→強奏のユニゾンで始まり、終わる。後半に向けてaccel.
◎コンテストで演奏する場合にカットの必要がない、4分強で完結する曲→いわゆる中間部はテンポを落とさず、音色の変化・音の密度で変化をつける
◆曲の構成と、実際の演奏について
この曲は、2つのテーマと、それら以外のつなぎの部分で構成されています。
1つ目のテーマは、[A]の1~2小節目のリズム。(アクセント付きの4連打+シンコペーションの連続)
2つ目のテーマは、[E]の3~6小節目の1stが演奏するフレーズ。(音程差のあるメロディックな動き)
テーマと関連のある部分は、テーマが聞こえるようにバランスを取ります。具体的には、テーマ以外の音符やパートを叩きすぎないよう、fと書いてあっても少し冷静に。
つなぎの部分は、3つのパートの掛け合いを聴かせたいので、とにかく派手に。バランスも基本的には3人が同等で良いと思います。
この曲の場合、見栄えを考えて手順を揃える必要はないと個人的には考えますが、フレーズ感を揃えるために、ある程度ルールを決めるのはアリだと思います。
例えば、1つ目のテーマの4連打。4発連続であることを強調するために片手で演奏するのか(ダン!ダン!ダン!ダン!)、拍子に乗ることを優先して拍頭をより強調して交互に演奏するのか(ダン!ドン!ダン!ドン!)。右で始めるか左で始めるかは関係なく、片手か交互かでキャラクターが変わってくると思います。
楽器の選択に関しては、大太鼓とスプラッシュシンバルについてよく質問を受けます。
◎大太鼓は、ドラムセット用の、ミュートが効いたバスドラムを想定して作曲しました。
通常のドラムをそのまま使うと、フロアトム(タム)の方が余韻が長い場合があると思うので、小さなトムから大太鼓までが繋がるように、トムのミュートを工夫されると良いかと思います。(音が止まりすぎないように、できれば離れて聞いてみて調整ができると良いと思います。手元では響きが長いように感じられても、離れて聞くとそうでもない場合も。)
コンサートバスドラムを使う場合は、今度は逆に大太鼓をある程度ミュートをして、フロアトムと響きがかけ離れないようにできると良いと思います。
◎シンバルは、この曲では大太鼓と同時に叩くことが多く、余韻の長さを近づけたかったため、普通のSuspended Cymbal(Crash Cymbal)ではなくスプラッシュを指定しました。
なので、スプラッシュ単体で選ぶというよりは、大太鼓と同時に鳴らしてしっくりくるものが選べると良いと思います。
コンサート用の大太鼓を使用する場合は、それ自体がある程度響きがあると思いますので、通常のシンバル(ドラムセットで使っている物)もアリだと思います。
全体的には、初心者でも取り組みやすいようにシンプルに書いてありますが、逆に、楽譜に書かれていないこだわれるポイントは多いと思います。
この曲で使い分けられている3つのアクセントと、アクセントの書かれていない音符の差を、それぞれどれくらいにするか。
リムの音色はどうするか。チップ(バチの先端)で叩くのか、ショルダー(チップの下の、くびれた部分から真ん中に向かって太くなる部分)で叩くのか、常に同じ場所で叩くのか、音量変化に合わせて場所も変えるのか。
2回あるaccel.の設定はどうするのか。2回とも均等に上げるのか、2回目に大きな変化を付けるために1回目は控えめにするのか。1回目でぐっと上げ、さらに2回目でダメ押しするのか。
cresc.のタイミングは、迫ってくるように均等に上げるのか、劇的な変化がつくように後半に寄せるのか。
コンガボンゴを素手で叩くときの音色は?ブラシの材質は?挙げだすとキリがありません・・・。
アンサンブルコンテストの場合、夏のコンクールに比べると短い期間で仕上げる学校が多いかと思います。
曲が曲なので勢いも大事ですが、完成度の高さこそが、どれだけ聴いている人をドキドキワクワクさせられるかに繋がると思います。
全体像ができた後は、時間の許す限り細部に拘ることができると、完成度の高い演奏になるのではないでしょうか。
機械的に縦を合わせることと同じくらい、音色や音楽の運び方に拘れると、バランスが良いかな、と個人的には思います。
以上です。
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