「6月の風」についてのあれこれ

(以前のブログからのお引越し記事です)

6月の風について、「曲のイメージを教えてください」等の質問を最近多く頂くのですが、お一人ずつに返信する時間的余裕がなくなってきたため、ここにまとめます!

(オリジナルのフルート4重奏版:委嘱初演者による新録音)

◆作曲の経緯

この曲のオリジナルであるフルート4重奏版は、友人の組んだフルートカルテットの、デビューコンサートのために書いたものです。
2011年【6月】に行われたドルチェ楽器デビューコンサートのレセプションで知り合った4人が組んだ、【juin】(フランス語で6月)という名前のカルテットのために書いたものなので、タイトルを【6月の風】としました。
(当初はフランス語のままVent de juinとしていましたが、出版の際に日本語タイトルになりました)

その友人は、高校卒業後に音楽とは関係のない短大を出たのちに一般企業に就職したのですが、音楽の道が諦めきれず、仕事を辞めて音楽の学校で勉強を続けているところでした。
そんな友人を応援する気持ちで書いた曲なので、イメージとしては、前向きで明るく、夢に向かって突き進むような推進力があると良いかな、と思います。
(その友人は、今ではプロのオーケストラにもエキストラで乗せていただくようになりました!)

◆曲の構成と、実際の演奏について

基本的には1曲の中でテンポは変わらないのですが、中間部にあたる部分では、テンポを倍に感じることで、急-緩-急の形式になるようにしました。(冒頭がテンポ144、中間部が72なので、ちょうど半分)
解釈や編成、本番会場の残響の長さによっては、必ずしもピッタリ144で演奏する必要はありませんが、中間部がちょうど半分のテンポになるよう調整してください。
このテンポ設定が上手くいっていないと、結果的にテンポがコロコロ変わってしまい、全体がちぐはぐな印象になる恐れがあります。

中間部にあたる緩の場面は、雨の様子を表しています。
前後の急の部分と、テンポだけでなく音色や雰囲気も対比を付けられると、メリハリのある演奏になるのではないかと思います。

「括弧書きでsenza rit.の指示があります。 作曲当初はrit.をせずテンポが2倍に伸びるイメージでしたが、再演を重ねるうちに rit. するバージョンもこれはこれで良いかな?と思うようになりました。 どちらを選択するかは、奏者のみなさんにお任せします。」と、大人の事情で楽譜の解説には書いてありますが、本音としてはrit.はなしです・・・

演奏上の一番の注意点は、バランスです。
基本的には、旋律・ベースを大きめに、それ以外を控えめにバランスを取ってください。
特にフレキシブル版は特定の編成を想定していませんので、意識的にバランスを操作する必要があります。
フルートカルテットの場合は、どうしても低音パートが弱く聞こえやすいので、低音に対して内声が大きすぎないか注意を払ってみてください。

例外的に全員のバランスを均一に整える必要があるのが、[D]の4小節前~や[I]の5,3,2小節前、バージョンによってはラスト数小節に現れる、ベルトーンのように重なる部分です。
この部分は特に、全員の動きを見せたい部分なので、引っ込んでしまうパートがないように、また飛びぬけて聞こえてくるパートがないように注意してください。


以上です。
さらに具体的な内容・打楽器の奏法については、言葉で説明できることは限られますので、実際にレッスンに呼んでいただけると嬉しいです!
フルートカルテットjuinのメンバー等、各楽器の奏者を紹介することもできますので、お問い合わせフォームよりご相談ください!